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コロナ後遺症(新型コロナウイルス後遺症)の鍼灸治療

コロナ後遺症 (新型コロナウイルス感染症の後遺症) の主要な症状と鍼灸治療の効果についてご紹介します。

倦怠感に関する鍼灸治療の効果

コロナ後遺症 (新型コロナウイルス感染症の後遺症) の主要な症状に「倦怠感」があります。コロナ後遺症の症状といえば倦怠感といっても差し支えないでしょう。
症状は人によって差がありますが、起き上がれないほどの倦怠感から、少し動くと出てくる倦怠感、朝だけでる倦怠感など様々です。

コロナ後遺症に限らず倦怠感の治療に関しては鍼灸治療が有効であるという報告は以前からありました。特に価値のある報告としてこちらの論文をご紹介します。

【Efficacy of Contact Needle Therapy for Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy.】

(癌化学療法誘発性末梢神経障害に対する接触鍼治療の有効性)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3671681/

この論文は、「癌の化学療法に伴って発症する末梢神経障害に対して皮膚に接触させるような優しい刺激の鍼灸治療が有効であった。」というものです。
この論文の中で、倦怠感についても触れており、倦怠感の改善もみられたとしています。癌の化学療法に伴う倦怠感も重い場合が多く、コロナ後遺症の倦怠感とよく似ています。

【慢性疲労症候群に対する鍼治療の検討】

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/44/3/44_3_238/_pdf/-char/ja

こちらの報告はやや古い報告ではありますが、コロナ後遺症の方で慢性疲労症候群の診断が出る方もいらっしゃるので参考になります。

こちらの報告でも倦怠感に対する鍼灸は有効であるとしています。慢性疲労症候群の中心的症状である激しい疲労感については鍼灸治療1ヵ月目から変化がみられ、2ヵ月後には1例 を除いてすべての症例にPS(パフォーマンスステータス)による疲労度は著しく改善し、いずれも良い経過であった。としています。

これらふたつの論文とYI’N YANG (インヤン)で治療していただいているコロナ後遺症患者さんの治療経過が重なることが多いです。倦怠感の変化自体には差があるものの、倦怠感以外の他の症状に変化がみられると、倦怠感も改善してくる事が多いようです。

逆流性食道炎に関する鍼灸治療の効果

コロナ後遺症 (新型コロナウイルス感染症の後遺症) の症状のなかに「逆流性食道炎」があります。
一番多いのは倦怠感ですが、胃の症状が多いのもコロナ後遺症の特徴です。逆流性食道炎は、胃酸や食べ物などの胃の内容物が食道に逆流することによって起こる病気です。
主には、胸やけや酸っぱいものが上がってくる、食後の胸の痛みなどがあり、ゲップが多く出たり、上腹部の張りが強くて苦しかったりします。これらの症状に鍼灸は有効とされています。

コロナ後遺症に限らず逆流性食道炎からくる諸症状には鍼灸治療が有効であるという報告がいくつかあります。

【Systematic Evaluation of Acupuncture and Combined Therapies for Treating Reflux Esophagitis.】

(鍼治療と他療法の併用による逆流性食道炎の系統的評価)

https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202002248902364790

この論文はメタアナリシスという研究の方法で、複数の研究結果を統合し、それらを評価したり解析したりするという、研究の中でも最も精度の高い研究手法といわれる価値の高い論文です。
この論文の中で、鍼灸治療は逆流性食道炎の再発率を下げるのに、鍼灸治療単独か、或いは鍼灸治療と漢方薬治療の併用は西洋薬より優れているとされています。
まだまだ症例数や研究の数が多くはないので確定的ではなく今後の研究が待たれる、と結んでいますが、逆流性食道炎に対する鍼灸治療の有効性は、今まである論文の中では有効であり、評価できるとしています。

【内臓痛・消化器機能・消化器症状に関する鍼灸の効果】

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/53/4/53_4_484/_pdf/-char/ja

こちらは総説として、今まで研究されてきた内臓の痛みや消化器系の機能や症状に対する鍼灸治療の研究を総括し、分かっている事や予測として考えられることをまとめています。

そのなかで、特に吐き気 や嘔吐に対する検討が数多くなされており、その成果の一部はNIH(米国国立衛生研究所)による「鍼に関する合意声明」でも取り上げられ、鍼の効果として世界で認められた、としています。また胃炎などの原因とされる胃酸の過剰分泌に対する鍼灸治療の効果は、胃酸分泌を低下させるという結果が現状では支持されており、 胃潰瘍などの疾患に対して対症療法として鍼灸治療を推奨することは妥当である、としています。

これらの論文総説はコロナ後遺症による逆流性食道炎に対する鍼灸治療の報告ではありませんが、コロナ後遺症の腫瘍症状である倦怠感と合わせて、逆流性食道炎の諸症状の治療に鍼灸が有効であることを示しています。

ベーシックな治療頻度としては、1週間に1度の鍼灸治療を2ヶ月ほど続けるとコロナ後遺症の症状が軽減されることが多いのが、YI’N YANGでのコロナ後遺症に対する鍼灸治療の傾向です。

食欲不信に関する鍼灸治療の効果

コロナ後遺症の症状のなかに「食欲不信」があります。一番多いのは倦怠感ですが、胃などの消化器系の症状が多いのもコロナ後遺症の特徴です。
胃酸や食べ物などの胃の内容物が食道に逆流することによって起こる逆流性食道炎とともに、コロナ後遺症の消化器系症状のひとつとされています。

食欲不振はコロナ後遺症に限らず鍼灸治療が有効であるという報告は以前からあり、食欲不振に有効な治療薬がないことから、東洋医学である漢方や鍼灸で治療する事の多い症状です。
また飽食の現代では考えられないことですが、江戸時代以前は「食べれなければ命に係わる。」ほどのことでした。
ですので東洋医学ではいかに食事を摂れるか、いかに美味しく食べれるか、いかに栄養を取り続けられるかが重要でした。
胃腸の調子が悪くなるのは一大事、実は東洋医学は胃腸不調にとても強い医学なのです。ただ食欲不信や食べれない事を評価するのが難しく、その改善というのも個人の主観によるところが大きいため、なかなか研究にはなりません。

鍼灸治療では治療後に食欲が増すことが多く、美味しく食事をとれる事が多いです。これは胃などの消化器系の蠕動運動という消化吸収の働きが鍼灸治療により活発になるためとされています。

【鍼治療が有効であったCOPDの1症例】

(鍼治療と他療法の併用による逆流性食道炎の系統的評価)

https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/043050289j.pdf

この論文は慢性閉塞性肺疾患(COPD)という病気に対して鍼灸治療が有効であったという論文です。この論文は日本呼吸器科学会でとても評価され、近年の鍼灸研究で評価の高い論文のひとつです。
この論文の中で、鍼灸治療は慢性閉塞性肺疾患(COPD)にともなう食欲不振にも効果があったとしています。患者さん本人が「食欲が出てきた」とコメントがあるなど、重い病気であっても経過がとても良好です。

これらの論文や鍼灸の特性は、コロナ後遺症による倦怠感や逆流性食道炎に対する鍼灸治療と合わせて、食欲不振に鍼灸が有効であることを示しています。

咳・喘息に関する鍼灸治療の効果

コロナ後遺症の症状のなかに「咳・喘息様の症状」があります。
一番多いのは倦怠感ですが、咳や喘息に似た症状も併発している場合があります。
胃酸や食べ物などの胃の内容物が食道に逆流することによって起こる逆流性食道炎など、コロナ後遺症は消化器系症状のがクローズアップされますが、長引く咳や喘息に似た症状もよくみかける症状です。。

咳・喘息はコロナ後遺症に限らず鍼灸治療が有効であるという報告は以前からあり、東洋医学も得意とする症状のひとつです。

【A Randomized, Placebo-Controlled Trial of Acupuncture in Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease (COPD) 】

(慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者における鍼治療のランダム化プラセボ対照試験)

https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/1151703

この論文は慢性閉塞性肺疾患(COPD)という病気に対して鍼灸治療が有効であったという論文です。この論文は日本呼吸器科学会でもとても評価され、近年の鍼灸研究で世界的にも評価の高い論文のひとつです。
この論文の中で、鍼灸治療は慢性閉塞性肺疾患(COPD)にともなう呼吸困難に対して有効であったとしています。

呼吸が浅い、呼吸し難い状態、喘息などはその最たるものですが、そのような状態に鍼灸治療は有効であるといえるでしょう。
コロナ後遺症の症状のひとつである咳・喘息様の症状にも鍼灸治療は有用な治療手段のひとつです。

下痢に関する鍼灸治療の効果

コロナ後遺症の症状のなかに「下痢」があります。
一番多いのは倦怠感ですが、消化器系の症状が多いのもコロナ後遺症の特徴です。
胃酸や食べ物などの胃の内容物が食道に逆流することによって起こる逆流性食道炎とともに、コロナ後遺症の消化器系症状のひとつとされています。

下痢はコロナ後遺症に限らず鍼灸治療が有効であるという報告は多数あり、過敏性腸症候群(IBS)などにも効果的だとされています。 
まだ今ほど医療が整備される以前の明治大正昭和初期などは下痢は大変な病でした。脱水になったり、栄養が吸収できていなかったり、栄養状態が現代より悪かった当時は下痢などの消化器系症状は死活問題でした。
今ほど下痢に対して有効な治療法がない時代は、鍼灸治療で下痢に対処していました。現代においても過敏性腸症候群などの下痢症状に対する鍼灸治療の研究や報告は多数あり、まとめられています。

『ここまでわかった鍼灸医学―基礎と臨床との交流』

第4講 鍼灸で過敏性腸症候群が改善する

https://www.jsam.jp/pdflib/kiso_p10.pdf

この報告は、現在までにわかった鍼灸の研究と一般的に行われている鍼灸治療を結び付けたカタチでまとめています。この報告の中で単純な下痢を含む過敏性腸症候群に対して鍼灸が有効であると結んでいます。

コロナ後遺症による下痢も、過敏性腸症候群による下痢も、それぞれに特徴があるのはもちろんですが、下痢が起こっているという現象については同じです。

頭のほてり・血が上がる様な症状に関する鍼灸治療の効果

 コロナ後遺症(新型コロナウイルス後遺症)の症状のなかに「頭のほてり・血が上がる様な症状」があります。

一番多いのは倦怠感ですが、自律神経系の異常のような症状があるのもコロナ後遺症の特徴です。頭のほてり・血が上がる様な症状といえば真っ先に思い浮かぶのが更年期障害の時のホットフラッシュという症状です。

頭や頚肩、上半身全体がほてったり、頭に血が上るような状態を東洋医学では肝鬱、もしくは上実下虚といいます。ここでの人体の仕組みはとても簡単です。人体は熱で動いています。

生命活動をすると、身体を動かすと、頭を働かせると体内では必ず熱が発生します。それは適度な熱が身体の機能を高めてくれるからです。スポーツ選手がウォーミングアップをするのはけがの予防など様々な理由はありますが、運動するのに適した体温にするための準備でもあります。

体内で発生した熱は、自然界と同じで上昇する性質があります。上昇した熱は上の方に鬱滞して熱自身で下がってくることはありません。ここで人体の機能が正常に働いていると、消化吸収の力や呼吸の力で熱を下に降ろし、手や足などの末梢に分配しようとします。

食物は身体に吸収される時にカロリー(熱量)といわれます。カロリー(熱量)は消化吸収の経路が上から下です。呼吸の経路も上から下、中心から末梢に向かって心臓と肺の循環を中心に酸素が全身に供給されます。

ここで問題になるのが、その消化吸収と呼吸の動作や経路に不具合があると身体機能が正常に働かず、熱を下に降ろすことが出来ません。

呼吸が浅い、胃の疲れ、消化器系の炎症、下痢や便秘などの場合に、その部分に熱が停滞するため、停滞した熱はふらふらと上にのぼせていくという悪循環が出来上がります。

これらを解消するためには東洋医学はとても有益です。というのも、現代医療の中ではこれらに有効な手立ては非常にすくないため、東洋医学で対処できる可能性が高いです。

【Efficacy of a standardised acupuncture approach for women with bothersome menopausal symptoms: a pragmatic randomised study in primary care】

(更年期症状を持つ女性に対する標準化された鍼治療の有効性:プライマリケアにおける実用的なランダム化研究)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/53/4/53_4_484/_pdf/-char/ja

 この論文は、デンマークで行われた更年期症状のホットフラッシュに対して鍼灸治療でランダム化比較試験という精度の高い研究が行われたという報告です。ホットフラッシュ症状の変化、朝夕の発汗、一般的な発汗、閉経関連睡眠障害、感情コントロール、身体的症状、肌髪の問題にも改善がみられたとしています。コロナ後遺症の頭のほてり・血が上る様な症状に対する鍼灸治療の参考になる論文です。

コロナ後遺症の鍼灸治療

ベーシックな治療頻度としては、1週間に1度の鍼灸治療を2ヶ月ほど続けると倦怠感が軽減されることが多いのが、YI’N YANGでのコロナ後遺症の倦怠感に対する鍼灸治療の傾向です。

横山 奨
横山 奨https://yinyang-health.com/
YI'N YANG 総院長 / アイム鍼灸院 院長 鍼灸師 / あん摩マッサージ指圧師 小中高大とスピードスケートを競技として続け、日本大学、東洋鍼灸専門学校を卒業後、アイム鍼灸院を開業。開業の傍ら、明治国際医療大学大学院にて鍼灸学修士を取得。現在、年間のべ4000人の鍼灸治療を行っている。「無痛の鍼、心地よいお灸」を掲げ、クラシックな鍼灸治療をリデザイン中。
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