春は始まりの季節!なのですが…
春は始まりの季節です。すでに暦では立春・啓蟄を過ぎ、あと10日もすれば春分の日となります。
春分の日とは秋分の日と同じく、日中と夜間の時間が等しくなる日です。
春分の日は一日の陰陽が等しくなる日でもあり、この日からさらに日中の時間が長くなります。
昼を陽とするなら夜は陰です。春分以降、日が長くなることで、自然界の陽気がさらに盛んとなります。
この太陽の動きに従うように人の体も活発になっていきます。それが自然な状態であり健康といえるのです。
しかし冬の養生(※冬の場合、正しくは養蔵)が適切でなければ、春になっても体のエンジンがかかりません。このことは夜にしっかりと睡眠を摂っていなければ、朝がきても気持ちの良い目覚めができないのと同じことです。
前回記事で紹介した「“木の芽どき”の皮膚症状」や「花粉症」は、春に人の体が活動(陽のはたらき)を始めた結果の一つです。これらは元気な人が起こす症状です。このような症状を東洋医学では実(じつ)の症状といいます。反対に元気不足の人がおちいる症状を虚(きょ)といいます。
春におこる虚の症状は、冬の養生が不十分のために起こります。元気が足りない症状ですので「春になっても元気に活動できない」といった症状としてあらわれます。
先ほども例えとして書きましたように、夜にしっかりと寝てないため、朝の気持ちのいい目覚めどころか日中になっても活動できないのと同じことなのです。
春にみられるうつ症状
その代表的なものとして「うつ(鬱)症状」があります。
例えば、新生活が始まる時期にうつ症状が悪化するケースなどが知られています。
就活もクリアして、念願の会社に就職できた!
新社会人になって新しい仕事と生活が始まる…ハズだったのに
『なんだか得体のしれない憂鬱感に苛(さいな)まれる…』
『望んだはずの仕事なのに、行きたくない…』
『職場の上司や同期になじめない』
『本当にやりたかった仕事じゃなったのかも…』等々
これらの心身の不調・気力の低下のひとつの要因として、前の季節(秋~冬)に無理を重ねたせいで、春になってその悪影響が現れているとみることもできます。それぞれの季節に応じたバイオリズムがあり、そのリズムに応じた過ごし方(=養生)が大切なのです。
とはいえ春のうつ症状の原因は「季節のバイオリズム」だけとは言いません。複雑な症状ほど、その原因もまた複雑なものです。個々の体質、環境要因、それまでの各季節の過ごし方…など様々な下地・原因が積み重なって症状が複雑化するのです。
五月病を予防するには
以前は五月病というという症候が知られていましたが、東洋医学でみると同じ下地をもっている可能性が大きいです。五月病といえば、5月ゴールデン・ウィーク明けに突然おこる心身の不調・気力の低下・抑鬱…等の症状です。
新生活がスタートし、新しい環境、新しい仕事などになじむため、それまで気を張っていた状態がいったん緩む頃がゴールデンウィーク明け。仮に長期の休暇が無かったとしても、緊張の持続が途切れる頃がおよそ五月半ばです。このタイミングで隠れていた疲労や弱りが表面に出てくるのです。
ゴールデン・ウィークの過ごし方としては、旅行や遊びに行くことも魅力的ではありますが、その後のことも考えて「心身のケア」を選択肢に入れておくことも大切です。
「ゴールデン・ウィークはお近くの鍼灸院へ!」または「ゴールデン・ウィークまでに良い鍼灸院を見つけておく」というのも、心身の不調を起こさない秘訣と言えるかもしれませんね。
東洋医学的なケア・治療の長所としては「個人の体質的な不調」「社会的環境に起因する不調」「季節という大きな環境変化に対する不調」…等々を別々に区別せず、それらを包括的に診断し大きな視野でもって症状を調える点が挙げられます。
子どもにだって春の不調はやってくる
心身の不調という点では子どもたちの心身不調について補足しておきます。
心身の不調は社会人だけでなく、お子さんにもみられる症候です。
・不登校や登校前の体の不調(頭痛やめまい・吐き気・腹痛など)に悩む小中学生
・入園してから始まった情緒不安定(関西でいう“かんのむし”)・夜泣き・夜尿症
※「かんのむし」とは癇癪(かんしゃく)のこと。
「怒る」「泣く」「叫ぶ」「たたく」「噛む」「頭をぶつける」 …など、その子の年齢や個性によって表現方法は様々です。
(機会があれば「かんのむし」についても紹介しましょう。)
親御さんの中には『なぜ?』『幼稚園は楽しくないの?』『なにかイヤなことがあったの?』と、困惑する方々も少なくありません。
そのようなときには私は次のように説明しています。
子どもさん達にとっても新生活は大きな試練です。
・新しいクラスは新しい職場
・新しい先生は新しい上司
・新しいお友達は新しい同僚・同期
…と、こんな風に考えると、私たち大人にもその心情が理解しやすいと思います。
そして、お子さんの心情を理解することも大事ですが、さらに大切なのは乱れてしまった心身を調和させることです。このような心身の不調を調整することは東洋医学や鍼灸の得意分野です。
お子さん特有の体質(身体的特徴や生活習慣)を踏まえた上で、東洋医学的なケアができる小児はり(小児鍼灸)を受診するとよいでしょう。このような環境の変化に戸惑い不調をきたすお子さんは、小児はり(小児鍼灸)を受けに来院されることは珍しいことではないのです。
足立鍼灸治療院 足立繁久